●● 遺言の種類 ●●
遺言書には、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つの方法があり、通常はこのいずれかのことを指しています。
他にも「秘密証書遺言」、「一般危急遺言」「伝染病隔離者遺言」「在船者船舶遭難時遺言」などというのもありますが、ほとんど使われるケースはありません。
では、一般的な「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」のちがいは何でしょう?
●●公正証書遺言をお勧めします●●
2つの方式のうち、結局、どちらの方式で作ればよいのでしょうか?
それは、遺言をつくるときにあなたが何を優先するかにかかってきます。
「費用を優先するか」、「実現性を優先するか」です。
結論から申しますと、専門家は「公正証書」をお勧めします。
その理由は、「自筆証書」では、遺言の内容が法律上認められず無効となるおそれがありますし、「無理やり書かせたのではないか?」と、後で争われる可能性が大きいのです。
法律専門家である弁護士でさえ、自身の遺言は自筆にしないで公正証書にしていると聞きます。
そのため、実際の作成件数も全国で公正証書は105,000件(2016年)、自筆証書(検認)は16,000件(2013年)という統計数字に表れています。(自筆証書は数字に表れない未発見や破棄されたものも相当数あるかも知れません)
遺言書を作ることは、人生において一度きりという人がほとんどです。(書き直しは何度でも可能ですが)
そんな人生のラストメッセージともいえる大切な法的書類なのに、いざ自分の相続のときに無効になるなんて万に一つも避けなくてはなりません。
せっかく遺言を作ったのに、「果たしてこの遺言の内容は、きちんとその通りに実現されるのか?」ということが最大のポイントなのです。
●遺言はその内容が実現してこそ意味があります
そのための方法が、公正証書遺言です。
「安物買いの銭失い」という言葉がありますが、公正証書遺言を作るための少しばかりの費用を惜しむあまり、結局自筆証書で失敗することが多いのです。
弊所では、自筆遺言よりも
① 無効、偽造、変造、未発見、紛失、隠ぺい、破棄、争い等の心配がない。
② 面倒な家庭裁判所の検認手続きが必要のない。(手続きが早く完了する)
安全・確実な「公正証書遺言」をお勧めしております。
紛争防止のために遺言を書いたのに、紛争の原因になってしまっては元も子もありません。
中途半端な自筆遺言は揉めるもとになりやすく、かえって無い方がましな場合さえあるのです。
例えば、
・書き間違い
・法律のルールに則っていない
・内容があいまい
・大事なことが抜けている
・よく分からない
・遺産の一部が書かれていない
・遺言の文字が本人のものではない
・○○に無理やり書かされている
・判断能力がないときに書いている
などが自筆遺言では多くみられます。
(内容はあくまで遺言者が考えますから、これらのことは「公正証書」だからといって完全に払しょくできるわけではありません)
そうすると、通常の遺産分割協議以上に検認等の時間がかかったり、その解釈を巡って話し合いがもたれる(あるいは、裁判になったりする)ことになり、家族は余計な苦労することになります。
実は完璧な自筆遺言を仕上げるためには、本を1冊買ってきて読めばできるというものではなく、相当な知識と経験が必要となります。「生兵法は大怪我のもと」です。
公正証書遺言は作成時に費用がかかりますが、後々のトラブルがないことを考えますと、
③結果的に費用・時間・労力が節約でき、お得なのです。
以上をまとめますと、公正証書遺言は
① 遺言内容を確実に実現します。
② 相続人の紛争を防止します。
③ 相続人の負担を軽減します。
④ その後の遺言者本人や相続人に安心した生活をもたらします。
遺言者、相続人双方の有用性や労力負担を考えますと、
公正証書遺言>>>> 自筆証書遺言 >遺産分割協議 という順になります。
自筆証書遺言は、
① 公正証書遺言を作るお金がない。
② 遺言を作ったことを誰にも知られたくない。
③ 死期が迫っている。
などの例外的なケースの場合、一考に値します。
自筆証書遺言だとしても間違いの無いものであれば、無いよりは、あった方が相続人としては助かります。
一旦、自筆証書遺言を作った後で、余裕があれば、また公正証書遺言を検討してみれば良いでしょう。
『女性のための相続遺言』(総合法令出版)